ピップ株式会社 導入事例
GenUとAmazon Bedrockを活用し、売上・欠品データを自然言語で活用できる環境を構築

お話を伺った方
情報システム室 部長 塚本 隆広 様(写真左)
お客様の課題
小売企業様への安定供給を支えるため、営業部門と物流部門の連携作業を効率化する必要があった
在庫不足時に、営業担当者が物流センター担当者へ在庫補充を依頼するための資料作成・メール作成に時間がかかっていた
各種ツールを使った作業に依存しており、自然言語で必要なデータを確認し、資料作成に活用できる環境を求めていた
課題解決の効果
GenUとAmazon Redshiftを活用し、売上実績・欠品実績を自然言語で問い合わせられるAWS生成AI基盤を構築
企業別、出荷物流センター別、特定日、期間、仕入先、カテゴリ、商品など、多次元の条件でデータを抽出・集計できる環境を検証
SQL文の表示や頻出問い合わせのテンプレート化、Claude Sonnetの採用により、問い合わせ内容の改善や回答精度の向上に取り組める仕組みを整備
ピップ株式会社様は、医療衛生用品、健康食品、ベビー用品、ヘルスケア用品、日用雑貨、医薬品、医薬部外品、医療機器などの卸販売に加え、「ピップエレキバン」「ピップマグネループ」「スリムウォーク」などの自社開発商品の製造・販売を手がける総合ヘルスケア企業です。
開発・製造を担うメーカー機能と、商品を確実に届ける卸機能を併せ持ち、マーチャンダイジングやロジスティクスを通じて、生活者の健康と日々の暮らしを支えています。
同社では、小売企業様への安定供給を支えるため、営業部門と物流部門の連携強化に取り組んでいました。特に、売上実績や欠品実績をもとにした在庫補充依頼業務では、営業担当者が需要予測を踏まえて物流センター担当者へメールで依頼する必要があり、資料作成やメール作成に時間がかかっていました。
こうした課題に対し、ピップ株式会社様はAWS上に生成AI基盤を構築し、売上・欠品データを自然言語で問い合わせられる環境のPoCに取り組みました。NHN テコラスは、GenU、Amazon Bedrock、MCP、Amazon Redshiftなどを活用した生成AIデータ分析基盤の構築から、プロンプト改善、利用支援、引き継ぎまでを支援しました。
本記事では、情報システム室 部長 塚本隆広様に、今回の取り組みの背景、AWSを選定した理由、NHN テコラスの支援内容、今後の展望について伺いました。
売上・欠品データをもとにした在庫補充依頼業務に、資料作成とメール依頼の負担
ピップ株式会社様の事業において、小売企業様へ商品を安定的に届けるロジスティクス体制は重要な役割を担っています。その中で、売上実績や欠品状況をもとにした在庫補充依頼業務では、営業担当者が必要な情報を確認し、物流センター担当者へメールで依頼する作業が発生していました。
塚本様は、当時の課題について次のように話します。
「営業担当者は物流センター担当者へ需要予測を踏まえ、在庫補充をメールにて依頼しており、その依頼資料作成とメール依頼に時間がかかっていました」(塚本様)

売上実績や欠品状況を確認し、必要な情報を整理したうえで、相手に伝わる形にまとめるには一定の手間がかかります。こうした業務課題を、データ活用の観点から改善する役割を担っていたのが情報システム室です。
同室では、社内外のデータ活用や生成AI活用を通じて、社員にデータドリブンな考え方を浸透させることを重視しています。東西2拠点、24名体制で社内のIT活用を支えるなかで、業務担当者がよりスムーズにデータを使える環境を整えることは、重要なテーマのひとつでした。
生成AIで納品状況・欠品状況の確認と資料作成を効率化するPoCを開始
ピップ株式会社様が生成AI活用に着目した背景には、納品状況や欠品状況の確認、在庫補充依頼に必要な資料作成を効率化したいという狙いがありました。
従来は、パソコンにインストールされた各種ツールを利用し、必要なデータを確認したうえで資料やメール文面を作成していました。こうした作業を生成AIで支援できれば、自然言語による対話形式でデータを確認し、アウトプット資料を作成しやすくなります。
「生成AIを活用することで、自然言語による対話形式でツールを利用せずにアウトプット資料を作成することが容易になり、作業の標準化と時間短縮を実現できると考えました」(塚本様)
今回のPoCでは、売上実績・欠品実績をもとに、生成AIを業務でどのように活用できるかを検証しました。単に生成AIを試すのではなく、営業担当者や業務担当者が必要な情報を自然言語で問い合わせ、実務に近いアウトプットを作成できるかどうかを確認することが、重要な検証ポイントとなりました。
既存DWHとの連携とセキュアなGenU環境を評価し、AWSを採用
生成AIを活用したデータ分析環境の構築にあたり、ピップ株式会社様はAWSを採用しました。決め手となったのは、既存のデータ基盤との親和性と、GenUを活用したセキュアな生成AI環境を構築できる点です。
「理由は2つあります。現在AWS上にDWHシステムを構築しており、データ連携が容易で、PoC期間の短縮ができること。もうひとつは、生成AIアプリケーションとしてGenUのハンズオン研修を受けたことがあり、UIについてもセキュリティを意識した環境を利用できると判断できたことです」(塚本様)
既存環境を活かしながら新たな生成AI活用を試せることは、限られたPoC期間の中で価値検証を進めるうえでも大きなメリットとなりました。
GenUとAmazon Redshiftで、売上実績を多次元に問い合わせできる環境を構築
今回構築した環境では、GenUを利用し、自然言語による問い合わせを起点にデータを活用できる仕組みを整えました。
ユーザーがGenUに自然言語で質問すると、MCPを介してAmazon Redshiftへ問い合わせを行います。自然言語の内容はSQLに変換され、Amazon Redshiftに格納されたデータを取得します。その結果をもとにAmazon Bedrockが回答を生成し、ユーザーが理解しやすい形で返答します。
▼ GenUとAmazon Redshiftを活用した自然言語データ分析基盤の構成イメージ

ピップ株式会社様では、売上実績をもとに、複数の条件を指定して自然言語で問い合わせられる環境として利用を進めています。
「直近2カ月間の売上実績をもとに、あらゆる条件をもとに自然言語での問い合わせができる環境として利用しております。企業別、出荷物流センター別、特定日、期間、該当仕入先、該当カテゴリ、商品など多次元での抽出条件、集計条件に指定できます」(塚本様)
自然言語で問い合わせられる環境を整えることで、SQLやBIツールの操作に詳しくない担当者でも、必要な情報へアクセスしやすくなります。
一方で、質問内容が曖昧な場合、結果に差異が出る可能性もあります。たとえば企業名の指定ひとつを取っても、正式名称と略称、表記ゆれによって抽出結果が変わる場合があります。
そのため今回のPoCでは、生成AIがどのようなSQLを発行したのかを確認できる点も重視しました。
「問い合わせ結果の品質をあげるために、データベースに問い合わせしたSQL文を表示することで、予期せぬ結果の場合に、問い合わせ内容を改善しやすくする点について重点的に確認させていただきました」(塚本様)
また、Amazon Bedrockで利用する生成AIモデルについても比較検証を行いました。当初から特定のモデルを前提としていたわけではなく、複数のモデルを対象に、トークン効率、SQL生成品質、レスポンス速度などを確認。その結果、トークン消費量を抑えながら安定したSQL生成が期待できる点を評価し、Claude Sonnetを採用しました。
自然言語で問い合わせられる利便性と、SQL文を確認しながら精度を高められる透明性、用途に適した生成AIモデルの選定を組み合わせることで、実務で使いやすい生成AI環境に近づけていきました。
データ基盤構築からプロンプト改善まで、PoCの価値検証を一貫して支援
NHN テコラスは、今回のPoCにおいて、AWS上でのデータ基盤構築、GenU環境の構築、プロンプト改善、利用支援までを一貫して支援しました。
本プロジェクトでは、「Japan AWS Top Engineers」および「Japan All AWS Certifications Engineers」に選出されている辻気流が担当エンジニアとして参画しました。AWSとデータ・AI領域の知見を活かし、GenU環境の構築、Amazon Redshiftとの連携、プロンプト改善など、PoCの価値検証を技術面から支援しました。
プロジェクトは、3か月間の構築期間と、2か月間の支援・引き継ぎ期間で進められました。構築フェーズでは、データソースの整理、分析環境の設計・構築、GenU環境の構築、自然言語による問い合わせ機能の実装を行いました。その後の支援フェーズでは、利用方法の説明やプロンプト修正、今後の活用に向けた引き継ぎを実施しました。
今回のような生成AIアプリケーション開発は、ピップ株式会社様にとって初めての取り組みでした。NHN テコラスでは月2回のユーザー確認会を実施し、進捗共有や要件確認に加え、生成AIに関するトピックスも紹介しながらプロジェクトを進めました。
「はじめての生成AIアプリケーション開発ということもあり、どのようにプロジェクトを推進していただけるのか大変興味がありました。前半では構築に向けた要件確認、レビュー、後半では生成AIのトピックス説明というように、新しい取り組みに対してユーザーが興味を持てるように配慮していただいた確認会でした」(塚本様)
また、生成AI活用では、業務要件やデータの意味、期待する回答形式を正しく共有することが重要です。NHN テコラスはドキュメントを残すことで、認識違いや理解不足を補いながらプロジェクトを進行しました。
特に要件定義段階では、ピップ株式会社様が生成AIに問い合わせたい内容や、期待する回答形式を整理するため、QAシートを活用しました。生成AIによるデータ分析では、質問文、参照すべきデータ、回答に含めたい情報、期待する出力形式をあらかじめ具体化することが重要です。
QAシートをもとに想定質問と回答イメージを整理することで、業務側と技術側の認識をそろえながら、プロンプト設計や検証項目の作成につなげました。
「ドキュメントをより多く残していただくことで、認識違いや理解不足を補うなどのフォローも適切で助かりました」(塚本様)
頻繁に問い合わせる内容についてはテンプレートを用意し、精度が落ちにくいよう工夫したプロンプトも活用しています。NHN テコラスは、AWSと生成AI、データ基盤の知見をもとに、生成AI環境を業務利用に近づけるための検証と改善を支援しました。

塚本 隆広 様(写真左)、担当プロジェクトメンバー 辻 (写真右)
在庫・天気情報も組み合わせ、在庫補充依頼からメール配信までのAIエージェント化へ
今回のPoCでは、売上実績・欠品実績をもとに、生成AIの業務活用にチャレンジしました。今後は、対象データや活用範囲をさらに広げていく構想です。
具体的には、売上・欠品データに加え、在庫データや天気情報などを組み合わせることで、より根拠のある在庫補充依頼資料の作成を目指します。欠品の発生状況や売上動向だけでなく、天候などの外部要因も踏まえて分析できれば、より多角的な判断材料を業務担当者に提供できる可能性があります。
「今後は在庫や天気情報などを加えて、より根拠のある在庫補充依頼資料の作成およびメール配信までの自動化連携、AIエージェント化の実現に向け、データも環境も増やしていければと考えております」(塚本様)
生成AIが単に回答を返すだけでなく、業務プロセスの一部を担うAIエージェントとして活用できれば、営業部門と物流部門の連携作業をより効率化できると期待されます。
NHN テコラスは、今後もAWSと生成AI、データ基盤の技術力を活かし、ピップ株式会社様のデータ活用高度化と、業務効率化に向けた取り組みを支援していきます。
NHN テコラス 担当プロジェクトメンバー
マーケティング本部 クラウドリードチーム 辻 気流
公開日 2026/09/07
導入サービス
ピップ株式会社について
ピップ株式会社は、1908年創業の総合ヘルスケア企業です。医療衛生用品、健康食品、ベビー用品、日用雑貨、医薬品、医療機器などの卸販売に加え、「ピップエレキバン」「ピップマグネループ」「スリムウォーク」などの自社開発商品の製造・販売を展開。メーカー機能と卸機能を併せ持ち、生活者の健康と快適な暮らしを支えています。





